— お母さんにおつかいを頼まれた女の子の物語です —

お母さんは、お店の住所と買い物リストを渡してきました。

「じゃあ、お願いね。 迷ったら人に聞くのよ」
「はーい、いってきまーす!」

家を出ると、そこは街灯も月明かりもまったくない、真っ暗闇でした。
そこから右往左往しますが、やがて不安になってきたわたしは

「ねえー、誰かー!」

と叫んでしまいました。 すると、

「おーい! どうしたー!?」

そんな声が聞こえてきました。

「行き先がわからないんです!」

そう伝えると、声の主はここまで飛んできて

「よしわかった、俺が案内してやる!」

と言いました。

「わぁ、ありがとうございます!」
「俺はニバンって言うんだ。 お前はそうだな……ジュウバンな」
「え?」
「お前の名前だ。 いま付けた!」
「そっか、わかりました!」

わたしはこの旅ではジュウバンという名前で過ごすことになるみたいです。
ついて行き、しばらくすると光り輝く人が立っていました。

「あの人はイチバン。 行きたいところを言ったらどのバスに乗ればいいか教えてくれるよ」
「わかりました、ありがとうございます!」

そうお礼を言い、イチバンさんのところに行きました。

「あの、ここに行きたいんですけど……」

そう言ってメモを渡そうとしますが、イチバンさんは背が高くて届きません。 住所を読もうとすると、それは漢字で書いてありました。

「……読めない」

困っていると、ニバンさんが教えてくれました。

「ヨンバンくんに聞くといいよ。 あいつ詳しいから」
「そうなの? わかりました、聞いてみます!」

近くにいたヨンバンさんは背が高くはなかったので、住所の紙を渡して聞きました。

「すみません、これ、なんて読むんですか?」
「じゃあ、ひらがなに直して書いてあげるよ」

ヨンバンさんはひらがなで住所を書いてくれました。
イチバンさんのところに戻り、書いてくれた住所を読みました。

「それならこのバスに乗りなさい。 着いたら『イチノクニから来た』って伝えて、また行き先を言うんだよ」
「わかりました!」

わたしは、教えられたバスに乗りました。 バスはまもなく発車し、流れる景色を楽しんでいると、ほどなく終点に着きました。
着いた先に、イチバンさんに似た人がいました。

「すみません、イチノクニから来たんですけど、ここに行きたいんです」

イチバンさんに似た人は、別のバスを指さしました。

「この住所なら乗り換えだね。 あのバスに乗りなさい」
「わかりました!」

こうして、何本かのバスを乗り継ぎ、何人目かのイチバンさんに似た人に話しかけると、別の答えが返ってきました。

「この住所ね。 あちらの方に行きなさい」

ここからは徒歩の旅です。
しばらく歩いて行くと、大きい建物が見えました。
そこの入り口の近くには受付の人が立っていました。

「すみません、このお店に行きたいんですけど」

そういい、ヨンバンさんに書いてもらった紙を見せます。

「恐れ入ります。 元の紙を見せてもらえますか?」

受付の人は申し訳なさそうにそう言いました。 お店の詳しい場所が書いていなかったそうです。

「あ、はい。 これです」
「ありがとうございます。 こちらの店舗でしたら、エスカレーターを上がって2階でございます」
「わかりました、ありがとうございます!」

2階に着くと、お店がありました。 店員さんにお母さんからもらった買い物リストを渡し、

「これください!」

そう言いました。

「おつかいかい? 偉いねぇ」

目を細めてそう言う店員さんはリストに書いてあるものを袋に詰めて渡してくれました。
おまけはくれませんでした。
荷物を持ってバス停に行くと、運転手さんが言いました。

「イチノクニの子だね。 こっちだよ」
「はい、お願いします!」

こうして来た道と逆の順番でバスを乗り継ぐと、イチバンさんのいるバス停に止まりました。

「おかえり。 おつかいはできたかい?」
「はい、この通り!」

ふふんと買い物袋を見せました。

「そうかい、偉いねぇ。 さぁ、家はあっちだよ」
「はい、きょうは一日ありがとうございました!」

わたしは駆け足で家に帰り、お母さんに買い物袋を渡しました。

「ありがとう! 助かったわ」

お母さんからご褒美に飴をもらいました。

おわり


これ、インターネット上で日常茶飯事に起きている出来事です。
ていうかホームページを見に行く (http 通信) の話ですね。
この話は次回、詳しく解説します。